こんにちは、東京都文京区本郷三丁目の税理士・谷澤です。
法人税法のお話です。
役員報酬は原則として決算株主総会時に改定します。
税法上、報酬を変動させると、報酬の一部が損金不算入となります。
例外的に、業績が著しく悪化した一定の要件の下、減額が認められるものもあります。
関連会社債権者の求めで改定は不可 東京地裁・定期同額給与の減額を認めず
定期同額給与の減額改定が「業績悪化改定事由」に該当するか否かを巡り争われていた事件です。
東京地方裁判所はこのほど、関係会社の債権者からの求めによる減額改定では「業績悪化改定事由」には該当しないとして、納税者の請求を棄却する判断を示しました。
(平成24年(行ウ)第856号・平成26年5月30日判決)
今回の事件は、会計事務の受託事業等を行っているA社(12月決算法人)が代表取締役甲に支給した定期同額給与の減額を巡るものです。
A社は、代表取締役甲が同じく代表取締役を勤め、多額の債務超過状態にあるB社に対して手数料を支払っていました。
B社の債権者から「甲への役員給与を減額し、B社への手数料を増額することでB社から債権者への返済額を増加させる」旨の求めにより、それまで月額50万円支給していた甲の役員給与を、平成19年9月の取締役会で「月額20万円」に減額することとしました。
A社は、A社の設立自体、B社債権者と協議の上、了承されたもので、A社とB社は実質的に同一法人であり、本件減額改定は債権者との協議に基づき行われた恣意性がないものであるから、「業績悪化改定事由」に該当するとして甲に支給した役員給与510万円全額を損金算入して申告を行いました。
これに対し、税務当局が改定後の支給額を超える270万円の損金算入を否認する更正処分を行いました。
A社は、この処分を不服として訴訟に及んでいたものです。
東京地裁は、「原告の収支状況によれば、平成17年12月期から減額改定が行われた平成19年12月期の各事業年度において、同社の収益が大幅に減少したり、多額の損失が発生したりした事実は認められない。
各事業年度の9月30日時点における売上高にも大きな変動があるとは認められない。
原告が関連会社の債権者から減額改定を求められたことや、この求めに応じなければ原告が一括弁済を求められ、業務が立ちいかなくなる危険があったという事由は業績悪化改定事由には該当しないことは明らかである」として、原告の請求を棄却する判決を下しました。
なお、原告は東京高裁に控訴しています。
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2015年10月26日