こんにちは、東京都文京区本郷三丁目の税理士・谷澤です。
遺産分割協議書には「本協議書記載外の財産については、相続人XXが相続する」なる言葉を付することがあります。
協議書記載外の財産が新たに発見された場合、再度遺産分割協議書を記載する手間を省くためです。
さて、国税不服審判所に興味深い採決があります。
平成23年8月23日です。
遺産分割協議書に「本書に記載のない財産は特定の者に帰属する」との記載があったとしても、被相続人からの贈与契約が履行されていない財産については、遺産分割協議時点において共同相続人間で分割協議対象財産として認識されていないから、未分割財産であるとの栽決を行いました。
〈裁決要旨〉
請求人らは、被相続人が原資を出捐した請求人ら名義の各定期預金に係る証書が、生前にそれぞれ各名義人に手渡された時点で、被相続人からの贈与の履行が完了しているから、相続財産とはならない旨主張する。
しかしながら、確かに被相続人と請求人らとの間で、本件各定期預金に関する書面によらない贈与契約がそれぞれ成立したと認められるものの、書面によらない贈与は、その履行が終わるまでは当事者がいつでもこれを取り消すことができることから、その履行前は目的財産の確定的な移転があったということはできないので、贈与の有無は、贈与されたとする財産の管理・運用の状況等の具体的な事実に基づいて、総合的に判断すべきである。
これを本件についてみると、本件各定期預金の届出印は、その保管状況・使用状況・各名義人の当該届出印に対する認識などを勘案すると、相続開始時点においても本件被相続人が引き続き管理していたものと認められることから、本件各定期預金について、本件被相続人から各名義人へ確定的な移転があったとまではみることができない。したがって、本件各定期預金は、贈与によって請求人らが取得したものとは認めることができず、相続税の課税財産に該当する。
ただし、本件各定期預金は、遺産分割協議書に記載がなく、同書には「本書に記載のない遺産はすべて請求人Aが取得する」旨記載されているものの、請求人らの間において、当該遺産分割協議の時点で遺産分割対象財産として認識していなかったと解されることから、相続税法第55条《未分割遺産に対する課税》に規定する未分割財産であるとみるのが相当である。
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2014年6月14日