こんにちは、東京都文京区本郷三丁目駅徒歩4分の谷澤佳彦税理士事務所です。
今回は厚生労働省からの要望です。
医療法人(社団医療法人)の出資については、未上場株式と同様の評価が行われます。
出資者が医療法人を退社した際、出資の払い戻しを受けることができることから、財産としての価値を見出しての課税措置です。
古い医療法人になりますと、過去の利益の蓄積や不動産の含み益から、出資の評価額が高額になることもあります。
医療法人の出資は流通性がなく、相続の際には高額の相続税が課されま、時として医療法人の事業継続に支障をきたすことが起こっています。
このような事態を回避するため、平成19年4月1日以降、新規に設立する医療法人には出資持分はありません。
出資の代わりに基金、簡単にいうと劣後債務を拠出することで設立となります。
基金の相続税評価は拠出額のままです。
さて、旧来の出資持分のある医療法人ですが、厚生労働省は出資持分ナシの法人に移行させたい意向です。
現実は進んでいません。
出資持分アリからナシの法人に移行する際、税務の問題が発生します。
移行方法は、出資者が出資持分を放棄することになります。
一部の出資者が放棄すれば、他の出資者が放棄分の利益を受けるということで、贈与税が発生します。
出資者全員が放棄すれば、医療法人に贈与税が課されます。
これを回避する税制が平成29年から創設され、平成2年9月末日までの期間限定措置となっています。
厚生労働大臣の認定を受けた計画に沿って出資持分ナシに移行すれば、贈与税を課さないというものです。
認定を受けた計画数は平成30年度で83件(計画が実行された件数ではありません)、一方で出資持分のある医療法人は39,263法人(平成31年度末)です。
殆ど特例税制が機能していない状況です。
税制改正要望書では、本特例を3年延長し、令和5年9月30日まで適用させたいという内容です。
私も医療法人の出資を相続しました。
昭和36年、5万円で父が出資したところ、平成6年の相続時には評価が2,000万円でした。
2,000万円に対して相続税が課されました。
その数年後、相続を迎えた方は、同じ医療法人の出資5万円に対して、評価が3,500万円だったそうです。
株式のような配当は医療法上、ありません。
事業を引き継ぐわけでなく、換金性もなく、泣く泣く相続税を支払って引き継ぎました。
このような話、日本全国に多数あります。
なんとかして欲しいものです。
なお、出資持分のない医療法人への移行にあたり、出資者は持分放棄には抵抗があるようです。
退社すれば出資持分を時価返還受ける権利を放棄するのですから。
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2019年9月6日